大塩温泉(旧共同浴場 河原の湯):福島県) '12.06月

付近の岩盤から温泉が浸み出ている 上の建物が現在の共同浴場湯屋 前日の雨で半水没状態の河原の湯
60年経過したとは思えない湯口 炭酸泉がシュウシュウと湧き出す 念願の入浴です

2011年7月に新潟・福島地域を襲った大豪雨で只見川源流域は水位が異常に上昇し、ダムの決壊を防ぐために緊急放水を行なったため、会津地方の只見川流域では水位の上昇により氾濫が起こった。     その結果いくつものダムで放水が行われ、その結果、只見川の水位が下がって顔を出したのが、この「大塩温泉 旧共同浴場(河原の湯)」です。

この浴場跡が60年ぶりに姿を現したと温友から伺った時には、物珍しさから入浴したいという事ばかりではなく、ある格別な思いが私の頭をよぎりました。
以前、会津出身の知り合いに大塩温泉の季節限定露天風呂の話をすると、「私は大塩温泉近くの出身だがそんな物は見た事も聞いた事も無い」と言われた事があります。     「この湯船は昔は無かった物なのか、あってもご極一部の人以外はいらなかったものなのかな~」、なんて思っていたその時、彼女がこう言ったんですよ。
「そう言えば、集落から崖を下って行った先の川べりに共同浴場があった記憶があるのよね~」
今度は逆に私が「そんな物聞いた事も無いな~」と言うと、「子供の頃連れられて入ったはずなんだけれどな~」と言っていましたが、この話はそれ以上盛り上がる事はありませんでした。

その日から数年がたち、今回のこの「60年ぶりに原形をとどめた旧共同浴場が川底より出現」との情報。
心が揺すぶられない訳がありません。     「これだったんだ~」と思いましたね。

私がここを訪ねた時は数日雨が降り続けた後で、湯船が水没しているのは覚悟の上で、せめてその風景だけでも画像に収めたい。     あわよくば源泉の温かみをたとえ指先にでも感じたい。     ただただそう思って「たつみ荘さん」の扉をくぐりました。

たつみ荘さんのブログによく登場する気さくな女将さんが姿を現し、河原の湯を見たいとお願いすると、仕事中だったのにわざわざ行き方を案内してくれました。
たつみ荘さんの裏手の崖を「季節限定風呂」とは違う方向に川に向かって下りて行くと、このたびの水害でえぐられた岩盤と岩や木材がゴロゴロしています。     ガレ場のような崖を下ると赤茶色した岩盤がむき出しになっていて、僅かながら温かみを感じます。     近づくと所々からチュ~という音とともに僅かなガスや温泉成分が浸み出している事が分かります。

岩盤の向こうに60年ぶりに姿を現した旧共同浴場「河原の湯」が見えてきました。     昨日までの雨の影響か、只見川の水位は上がり、湯船の3分の1ほどが水没していましたが、湯口付近は十分温かく諦めていた入浴も可能のようです。
湯船内はもとより、周辺の砂地からもガスや温泉が噴出していて白い泡ぶくを形成しています。     特に杭の部分からはビールの泡のように炭酸泉が途切れることなく湧き出しています。

とても60年もの間川底に沈んでいたとは思えない湯船の木枠と湯口には驚かされました。
野湯の湯船を造る要領で付近の土嚢と石ころや木片で湯船の周りを補修しながら、ダムができる以前の昔の風景を想像しつつのんびりと1時間ほど入浴を楽しみました。
源泉は現在の共同浴場や付近の似たような温泉と比べてもより一層濃厚なものに思えます。
下流にあるダムの修復が済んだらこの浴場は再び川底に沈んでしまうようですが、実に惜しい気がします。

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